失敗に終わった放送法4条撤廃〜安倍総理の意図は?
2018年6月10日お知らせ
「放送を巡る規制改革」は、放送法4条撤廃等放送法の改正は盛り込まれず、放送コンテンツのネット配信基盤整備の推進など概ね常識的な内容に落ち着いた(規制改革推進会議答申:6月4日)。映像コンテンツ振興が必要なことに全く異論はない。「放送制度改革」の本当の狙いは何だったのだろう。
安倍総理の意図は何だったのか。私は、マスメディアの影響力排除を狙ったと考えている。2014年総選挙の際NHK及び在京放送テレビ局に対して「公平中立などを求める要望書」が渡されたり、放送停止(電波停止)を高市総務大臣(当時)が答弁するなど、安倍政権は、放送法4条「政治的公平」違反を盾にとり、地上波テレビ局への牽制を続けてきた。第一次政権の反省から、マスメディアの政権批判を抑え込もうとしたのだ。今回の「放送制度改革」もその延長にある。「モリカケ」ワイドショー報道などから、放送法4条ではテレビ局を完全に抑えることができないと判断して戦術を変えたのだ。
4条や外資規制など放送法の規制を撤廃、上下分離や免許オークションの導入、ネットTVの振興などにより新規参入のハードルを下げて放送事業者を増やし、既存の民放TV局の影響力を弱める。
また、4条の撤廃により政府は介入を行いやすくする。放送法は「放送番組は、法律に定める権限に基づく場合でなければ、何人からも干渉され、又は規律されることがない」(3条)とし番組内容の自由を保障した上、4条で放送事業者が守るべき「準則」として「政治的公平性」などを定め、政権の介入を防いできた。これらの規定をなくせば、免許に基づき放送事業者を指導しやすくなる。
これらが「放送制度改革」の狙いだった。
この4条の撤廃は、私も国会で追及したとおり、AbeTV化を招くとともに、フェイクニュースへの歯止めが失われるなどあまりにも問題が大きい。新聞全紙、野田総務大臣も反対にまわり、結局答申には盛り込まれなかった。
残念なことは、私も携わってきた日本の映像コンテンツ振興という本来の目的について充分な議論が行われなかったことだ。ネットを使って日本の映像コンテンツをどうやって世界に広げていくのか。具体的な方策は、今後の検討に委ねられた。
安倍政権は、マスメディアの影響を抑えることを諦めたわけではない。政権を維持するために必要と考えているからだ。内閣支持率が低下し、棚上げしただけだろう。トランプ大統領と同じく、メディアと闘う安倍政権。追及を続ける。