1. 学術会議会員任命拒否の理由を直ちに示すべき

学術会議会員任命拒否の理由を直ちに示すべき

1 誰が6名をはずしたか

菅総理は先週、105名が記載された推薦段階の名簿を「見ていない」とし、「(決裁の時点では)最終的に会員となった方(99名)がそのままリストになっていた」と発言している。それでは6名の任命拒否は誰が判断したのか。報道では杉田官房副長官が実質的な判断を行ったとされる。

 

「杉田氏は学術会議が8月31日に提出した105人の推薦者名簿の中から6人を除外し、99人に取りまとめる作業に関わった。9月24日に内閣府が99人を任命する決裁文書を起案する前に、首相にも経緯を説明。首相から具体的な指示があったかは分かっていない。加藤氏(官房長官)は「一般論」として、「官房副長官は官邸における総合調整の役割を果たしている」と語った。」(10月14日毎日新聞)

 

 6名を拒否する判断は任命権者である菅総理にしかできない。人任せにすれば、違法だ。杉田副長官からどのような説明があったのだろうか。菅総理は本当に6名の名簿を見ていないのか。私の質問に応じた事務方は下記のように回答している。

 

内閣府・矢作修己参事官:「あくまでも105名のうち99人を任命するということについての考え方について、決裁までの間に説明がなされておりますので、それに基づいて、この決裁過程というのは進んでおりますので」「(Q.名簿を見なくても構わないということですね?)特に違法性があるということは、我々いまの時点で考えていない」

 

 このとおりだとすれば「99人を任命するということについての考え方」つまり「6人を任命しない」「考え方」だけで任命拒否を判断したことになる。菅総理は本当に6名の名前さえ見なかったのだろうか。

 

2 どのような「考え方」で6名ははずされたのか

 杉田副長官がどのような「考え方」を説明したのかは明らかになっていない。

法律上は「(優れた研究又は業績がある科学者として日本学術会議が行った)推薦に基づいて、内閣総理大臣が任命をする」とされ、任命の判断はあくまで研究業績に基づかねばならない。

菅総理がこれまで一度もなかった任命拒否を行ったのは「学術会議が軍事研究に一貫して反対し、2015年に防衛省が始めた公募型研究制度の利用を「学問の自由」をおびやかすおそれがあるとして全国の大学・研究機関が慎重であるべき」との声明をだしたことが原因といわれている。また6名の方は「安保関連法」や「特定秘密保護法」等に反対していることも明らかになっている。

もし任命拒否の理由がそのとおりであれば、「学問の自由」だけでなく「思想・良心の自由」「表現の自由」をも侵す、違法な行為だ。政府は6人を任命拒否した理由を直ちに明らかにすべきだ。

 

3 これまでも行われてきた人事介入

 

 前川元文科次官は、過去にもこうした事例があったと証言する(野党ヒアリング)。

 

前川氏によると、16年8月ごろに委員(文化功労者選考分科会)のリストを杉田副長官に提出したところ、1週間ほど後に呼び出され、2人の差し替えを命じられた。前川氏は「杉田氏から『こういう政権を批判するような人物を入れては困る』とお叱りを受けた」と証言し、実際に別の人物を選び直したということだ。文部科学大臣が了解した人事をひっくり返すのだから杉田副長官の上司である菅官房長官の了解は当然とっているはずだとも証言した。

 

 菅氏は、官房長官時代から警察出身の杉田副長官にチェックをさせ、人事を動かしてきたことがわかる。今回の6名の任命拒否についても、チェックが入ったのだろう。

 

4 総理は自ら説明を

 

 事実とすれば、政府に反対する意見を述べる者を公職から排除する意思を、総理がはっきり示したことになる。忖度なのか、萩生田文部科学大臣も「大学の自治」大学学長について「基本的には(大学側の)申し出を尊重したい」とした上で、文科相の判断で任命しないこともありうるとの認識を示した。

 これらは「学問の自由」だけではなく「思想・良心の自由」「学問の自由」ひいては民主主義への挑戦だ。任命拒否の理由を、総理自ら、国民に説明して頂きたい。


Page Top